毎日の生活の中で、外国人労働者に関するニュースを耳にすることが増えてきました。
観光客として海外から訪れている外国人の方もいれば、学校では外国人留学生や私たちと同じ社会の中で働いている外国人の方もみえますね。
いろいろな場面で外国人の方と触れ合う機会がたくさんあると思います。
この記事では2019年4月から新しく始まる外国人受け入れ制度の在留資格「特定技能」についてお話していこうと思います。
目次
在留資格とは?
そもそも「在留資格」とはどういったものなのでしょうか?
ここ数年では、海外から日本へ観光に訪れたり、SNSでの交流や、インターネットやメディアなどでも日本の文化や生活に触れ合う機会も多くなり、
「日本の生活が気に入ったから日本に住みたいな」
「日本で仕事がしたいな」
「日本人の妻と一緒に日本で暮らしたい」
と思っている外国人の方も多いのではないでしょうか?
しかし、日本に観光に来るのは簡単ですが、日本に住むことは簡単にはできません。
日本に住むためには、外国人はどういった目的で日本に住むのかを行政に申請してきちんと合法的に滞在するための資格を認定される必要があります。
この資格が、「在留資格」です。
現在は27種類の在留資格が「入管法」と呼ばれる法律で定められていて、外国人が日本に住むためにはこの中のどれか1つの在留資格を持ってなければなりません。
在留資格を持っていないまま、日本に住む場合は「不法滞在」となってしまい、刑罰や強制撤去の対象になるため、注意が必要です。
また、この在留資格には有効期限があります。
期限は在留資格の種類によって異なりますが、期限内に更新をしないまま期限が過ぎてしまった場合にも、不法滞在になってしまうのでこちらにも気をつけましょう。
新在留資格「特定技能」とは?
では、今回2019年4月より新設されることとなった、新在留資格「特定技能」とはどういったものなのでしょうか?
これまでの在留資格とはどんなところがちがうのでしょうか?
また、創設の背景にはどのような事があって、どういった経緯で今回このような在留資格が新しくスタートされるのでしょうか?
新在留資格「特定技能」を設立する背景
現在の日本の労働社会では人手不足が深刻化していて、求人数も年々増加の傾向があります。
働く意欲のあるほとんどの人が就職している状態ですが、それでも特に中小企業などではかなりの人手不足が深刻化しています。
このような深刻な人手不足を解消するために、外国人労働者を受け入れる制度がこれまでにも設立され、現在、日本の社会は127万人もの外国人労働者に支えられ成り立っています。
これまでの外国人労働者の受け入れの対象は、「技術や、人文知識、国際業務」などの専門性や技術力の高い外国人材に限定していましたが、それでは日本の社会の深刻な人手不足は解消できていません。
そこで今回、一定の専門性や技能を持っている外国人材を活用することによって、日本の経済や、社会の基盤を維持し持続させるために、新しい在留資格「特定技能」が創立されることとなったのです。
「特定技能」とはどんな在留資格?
外国人労働者がこれまで日本で仕事に就ける在留資格「技術・人文知識・国際業務」では原則、学歴や実務経験が求められました。
今までは、日本で働きたくてもその条件に満たされない場合は、働くために日本に滞在する在留資格を取得できなかったのです。
しかし、今回の「特定技能」ではそのような学歴や実務経験は必要ありません。
一定の知識や技能レベルがあるかを試験によって確認し、在留資格「特定技能」が許可され、取得することができます。
在留資格「特定技能」を取得すれば、特別な知識や技術、一定年数の経験などが特に必要としない簡単な労働(単純労働)に就くことができます。
「学歴や特別な知識がなくても一定の知識やレベルがあれば取得でき、仕事に就ける」
これが新在留資格「特定技能」です。
現在、高齢者や未就業の女性の採用や子育て中の女性の確保、処遇改善、生産上の向上をはかっても、なお日本国内の人手不足が認められる14の職種で、この「特定技能」での外国人労働者を受け入れる予定になっています。
「特定技能」を受け入れる14の職種とは?
現在、在留資格「特定技能」で外国人労働者の受け入れを予定している職種は
- 宿泊業
- 建設業
- 自動車整備業
- 造船、舶用工業
- 航空業
- 介護
- ビルクリーニング
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
- 素形材産業
- 産業機械製造業
- 電気、電子情報関連産業
の、14種の職種です。
在留資格「特定技能」は「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類に分かれていて、1号、2号では、ここの14種の中でも職種や条件が変わってきます。
次は、特定技能1号と2号の違いについてお話していきます。
特定技能1号とは
特定技能1号は受け入れの職種分野で即戦力として活動するために必要な知識やレベルを試験によって確認されることとなっています。
試験によって基本的な知識や技能が確認され、在留資格「特定技能1号」として認められると、特定技能の対象となる14の職種全分野での労働ができます。
しかし、特定技能1号では日本への家族の同行が認められません。
さらに期間も最長で5年と決まっています。
また日本語のレベルとしては、日常の会話程度が求められ、こちらも試験によって確認されます。
特定技能2号とは
特定技能2号ではその受け入れ先の職種分野で熟練した技能が必要とされています。
特定技能1号である外国人が日本で滞在中に特定技能2号の試験に合格することで取得することができます。
特定技能1号と特定技能2号とはではいくつか異なる部分があります。
まず特定技能2号では、家族の同行が認められているので日本で家族といっしょに暮らすことができます。
そして在留期限が無制限となっています。
また特定技能2号では、特定技能1号よりも熟練した技能が必要とされ、試験の合格をもってその熟練度が確認されるという定義があります。
そのため特定技能2号では14の職種の中でも、
- 建設業
- 造船・舶用工業
- 自動車整備業
- 航空業
- 宿泊業
の、5つの分野を対象としています。
受け入れる国はどこ?
特定技能を受け入れる国は以下の9ヵ国が対象となっています。
- ベトナム
- フィリピン
- カンボジア
- インドネシア
- タイ
- ミャンマー
- ネパール
- モンゴル
- 中国
2019年1月現在では上記の9か国となっていますが、政府の今後の方針によっては増える可能性もあります。
技能実習と特定技能のちがいとは?
では、新制度の特定技能は技能実習とはどういった点が違うのでしょうか?
技能実習制度とは
技能実習とは、外国人が母国で習得が困難、又は不可能な技術や知識を日本で学ぶことです。
最長5年の実習が終われば、母国に帰り日本で学び習得した技術や技能を生かせる仕事に就くことが条件となっています。
技能実習での外国人の受け入れは、日本の国際協力や国際貢献の一環として、今日まで続いている外国人の「研修」制度です。
技能実習はあくまでも「研修」制度なので、労働力が不足する産業で労働力として即戦力となる「特定技能」とは大きく異なります。
また技能実習は、知識や技能を学ぶことを目的とした制度であるため、技術の身につかない単純労働をさせることができないのはもちろん、人手不足だからといって外国から人を雇うこともできません。
しかし、上記にあるように特定技能では対象の14の職種に限り即戦力となる単純労働者としても外国人を受け入れることができます。
これらが技能実習と特定技能の違いです。
技能実習から特定技能の資格はとれるの?
技能実習終了後、そのまま引き続き日本に在住のまま技能実習から特定技能へ在留資格を切り替えることは、現在できない見込みです。
技能実習生は一旦帰国しなければならないのです。
技能実習から特定技能の資格に切り替える際は、母国に帰国して特定技能での在留資格を取得する許可を得なければなりません。
特定技能は転職ができるの?
上記の技能実習ではこれまで認められていなかった「転職」が特定技能では認められるようになります。
ただし、特定技能の対象となる14の職種の中での転職となります。
この転職が認められた背景には、これまでの技能実習でいわゆるブラック企業などで就労した実習生に対する様々な問題を考慮したものとみられています。
特定技能は派遣で受け入れることもできるの?
特定技能では派遣形態は認められていません。
特定技能外国人の雇用はフルタイムが原則となっており、直接雇用のみが認められ今のところ派遣形態では認められてはいません。(2019年1月現在)
ただし、対象となる14職種の中の「農業」と「漁業」に関しては派遣形態が認められます。
なぜかと言うと、農業分野には冬場は農作業ができないなど、季節の変化による作業の繁閑があったり、同じ地域であっても収穫や定植などの作業のピーク時が異なるといった特性があり、農繁期の労働力の確保といった農業現場のニーズに対応するためと説明されており、漁業に関しても、同じです。
まとめ
現在も多くの外国人労働者の支えがあり、かろうじて成り立っている日本の労働社会ですが、それでも深刻的な人手不足は全く解決していません。
特定技能によって、少しでもこの問題を解消をしなければ日本の多くの企業が人材不足で倒産する可能性すらあります。
他人事では無く、日本人ひとりひとりが考えていくべき問題かと思います。